昨今よく耳にする『モンテッソーリ教育』。
どんな教育法なのか、ご存知ですか?
この記事では、モンテッソーリ教育の成り立ちや理念、具体的な実践項目などについて、要点だけを簡潔に解説します。
これを機にモンテッソーリ教育を正しく知りましょう!
マリア・モンテッソーリについて
モンテッソーリ教育法の考案者、マリア・モンテッソーリは、イタリア初の女性医学博士の一人です。
もともとは障がい児の治療教育に携わっていて、その中で「実践心理学」や「教育学」も研究していました。
やがて、障がい児に向けた教育法を健常児にも適応し始めます。
そのきっかけとなったのが、1907年に開設された『こどもの家』です。
『こどもの家』は、ローマの貧困層向けアパートの保育施設でした。
マリア・モンテッソーリは、この施設の監修・指導を任せられることになり、自らの教育法を実践していきました。
モンテッソーリ教育の目的・理念
目的
モンテッソーリ教育は、以下の5つを育てることを目的としています。
・自立
・有能
・責任感
・他人への思いやり
・生涯学び続ける姿勢
理念
次に、モンテッソーリ教育の理念についてです。
子どもは、自らを成長・発達させる力を持って生まれてきます。
どういうことかと言うと、子ども自身が「今は私の中のこの部分を発達させる時期なの!」とわかっている、ということです。
それは自然と、「こういうことをやりたい!こういう遊びがしたい!」という要求になって表れます。
この要求に基づいて最適な活動ができれば、子どもは生き生きと、好奇心旺盛に振る舞い、驚くほどの集中力を発揮します。
そんな子どもに対し、大人は、下記のような存在に徹するべきとします。
・子の発達要求を汲み取る
・子の自由を保障する
・子の自発的な活動を援助する
モンテッソーリ教育で大切なこと
以上のような目的・理念を達成するために、モンテッソーリ教育では以下のようなことを推奨しています。
◆大人は、押し付けるのではなく、環境を用意し見守る。
◆机上の勉強ではなく、生活の中で実体験を伴い学ぶことを重視する。
◆子のありのままを認め、好奇心と探究心を発揮させる。
◆一斉教育ではなく、自由を保障する。
実践項目(お仕事)と教具
モンテッソーリ教育では、子どもが選んだ教具で活動を実践することを「お仕事」と呼んでいます。
それでは、実際にどのようなお仕事があるのか、教具はどのようなものがあるのかを見ていきましょう。
※ここでは、3歳〜6歳を対象にしたお仕事を紹介します。
日常生活の練習
身体発達を促す活動。
主に、日常生活の中で大人が行うことを模倣(マネ)する学び。
教具の例:ごっこ遊び、おままごと、ボタンかけ、ひも通し、蝶結び、雑巾しぼり
感覚教育
見て、触って、操作する活動。
対にしたり、段階づけたり、仲間分けしたりする学び。
教具の例:積み木、スタッキング、型はめ、棒さし
言語教育
子どもの発達段階に合わせた、「名詞」、「形容詞」、「動詞」の学び。
話すこと、読み書きの学び。
ここで大切なことは、机上の勉強ではなく、実体験を通した「遊び」として学ぶこと!
教具の例:絵カード、文字カード、ひらがなのおもちゃ
算数教育
抽象的認識、論理性を育む学び。
幼児期の「論理性」とは、大人の論理性とは違い、実体験に基づく感覚的な論理性。
「算数」は日常生活に即したもの。
「1+1=2」と暗記するのではなく、実際に物を使って1個と1個を合わせると2個になるという学び方。
教具の例:アバカス、ビーズ
文化教育
歴史、地理、生き物、音楽などの学び。
先人の知恵を学び、受け継ぎ、発展させるという意味合いで文化を学ぶ。
教具の例:地図、地球儀、国旗、標本、植物の育成・観察、原始的な道具
現在におけるモンテッソーリ教育の問題点
さて、冒頭でもA子ママが言っていましたが、モンテッソーリ教育は、誤解されることも多い教育法です。
また、流行りであるがゆえの問題点もあります。
なぜ誤解されるのか?
「教育」と付いているため、一般教育との差別化という意味合いが強くなり、いわゆる「早期教育」だと勘違いされることがあります。
※「早期教育」とは、大人の意向で、本来適切な時期より早く教育を開始すること
また、モンテッソーリ教育では、遊びのことを「お仕事」と呼んだり、知育玩具のことを「教具」と読んだりするので、それもこのような誤解に繋がっていると考えられます。
本来の目的を見失いがち
更に、親がモンテッソーリ教育を意識しすぎるあまり、子どもがその思惑にはめ込まれてしまう危険性もあります。
教具でお仕事をするとお父さん・お母さんが喜ぶし、褒めてくれる。
↓
褒められたいからやる。
↓
褒められるようにやらないと自分は認めてもらえないのかな…?という心理状態に陥る危険性
また、モンテッソーリ教育を実践している園や施設などでも、実践しやすいように “メソッド化” してしまうと、だんだん “カリキュラム” のようになってしまい、本来のモンテッソーリ教育の大事な本質が見えにくくなってしまいます。
本来のモンテッソーリ教育を!
しかし、本来のモンテッソーリ教育は先述の通り、
子のありのままを認め、自発的な活動を援助し、見守ることを理念としています。
親の関心をどこに向けるべきか。
教具でお仕事をさせること、お仕事を達成させることだけが目的になっていないか。
このことは気をつけておきたい点です。
まとめ
■子ども自身が本来持っている「適切な時期に自分を発達させる力」を発揮できるよう、環境を用意し、自発的な活動を援助する。
■机上の勉強ではなく、実体験を伴い学ぶことを重視する
①日常生活の練習
②感覚教育
③言語教育
④算数教育
⑤文化教育
■早期教育ではない
■教具でお仕事をすること、達成させることが目的ではない
能力の獲得にはそれぞれ最適な時期があり、子どもはそれに基づいて興味の対象を変えていくのですね。
それを援助し、子どもの自発性を見守るのがモンテッソーリ教育。
日常生活でもそのような関わりを意識していきたいですね。